• 時事
  • 話題になった国内/国際ニュースからエンタメ、ネットニュースを弁護士からの視点で記事をまとめています。
ショッキング画像など、不適切な投稿に対する規制について

ショッキング画像など、不適切な投稿に対する規制について

最近、ツイッターなどのSNSにおいて、傷害事件や殺人事件の現場画像や動画が投稿され、広く拡散されるケースが相次いでいます。このようなショッキングな画像や動画が無制限に拡散されて人の目に触れる状態は、果たして妥当と言えるのでしょうか?規制する方法がないのかが問題です。

今回は、ツイッターで「グロ画像」などとも言われているショッキング画像投稿に対する法規制の可否について、考えてみましょう。

SNSの浸透とスマートフォンの普及

2019年5月、東京都新宿区内のマンションで女性が知人男性を刃物で刺した現場と思しき画像がツイッターなどのSNSで拡散されて、騒ぎになりました。同じく5月、名古屋市の路上で男性が通りすがりの男性を刺殺した場面の動画が「グロ画像」などと言われて大きく拡散されました。

このようにSNS上で殺人事件や傷害事件などの画像・動画が広く拡散されるようになったのは、スマホとSNSの普及が一因です。

特に若年層ではスマホを利用したSNSの利用時間が長くなっており、「株式会社ビデオリサーチ」という会社が実施したアンケートによると、15歳以上のティーンエイジャーや20代では男女ともにテレビの視聴時間よりSNSの利用時間の方が長いという調査結果も出ています。

このことからすると、ショッキングな画像や動画が投稿されると、若者がおもしろがって拡散するため、またたくまに全国に広がっているとも考えられます。

安易な投稿と承認欲求

そうだとしても、どうして殺人現場などの見ていて不愉快な動画や画像までが平気で投稿・拡散されるのでしょうか?

そこには人間の「承認欲求」が関係しています。人は誰しも「他人に認めてもらいたい」という承認欲求を持っています。そしてSNSでは「いいね」や「リツイート」「拡散」などの機能により、数字で具体的に承認度合いを測れてしまいます。

ショッキングな内容であっても、投稿したらまたたくまに「いいね」がついてリツイートで拡散され続ける、そういった結果を求めて安易な投稿が行われていると考えられます。

表現の自由の規制は困難

殺人現場などの不適切な画像・動画を投稿することを規制できないでしょうか?

実は、憲法が保障している「表現の自由」との関係で法規制は困難です。

表現の自由とは、国民が自由に自分の思想や信条、考えなどを表現できる自由です。民主主義の根本となる重要な権利であり、ネットにおける発言や投稿も表現の自由の一内容として保障されます。

名誉毀損やプライバシー権侵害などの他人への権利侵害があれば表現の自由も制限を受けますが、そういった事情でもない限り、検閲的な表現の自由への規制は認められません。

たとえ殺人事件などの現場を写した写真や動画であっても、それが誰かの権利を侵害していない限りは規制する根拠がないのです。肖像権やプライバシー権などの侵害がない限り、単に「見る人を不快にさせるかも知れない」「模倣犯を生み出す可能性がある」というレベルでは投稿を禁止できません。

現在の自主規制の現状

法律では規制できないので、ショッキング画像の投稿の制限は「自主規制」に任せられています。

たとえばツイッターでは暴力的な描写を含む動画・画像の投稿が禁止されていて、「人や動物の殺傷場面、暴力シーン」などの投稿があると、発見次第削除されたりアカウントを停止されたりする可能性が高くなります。

なおネットではありませんが、従来の表現媒体においても、出版社が差別的な内容の本の出版を自主規制したり書店が差別的な内容の本の販売を自主規制したりしたケースがあります。

まとめ

現状の法制度において「ショッキング画像や動画の投稿を一律禁止する」法規制は困難で、不適切な画像・動画を投稿しないという個人の良心に任されているのが現状です。

かつてはマスコミや出版社などが情報発信を一手に担っていましたが、今は時代が変わり、個人が発信者となっています。従来の方法では適切な情報管理ができなくなってきており、今後のネットにおける情報管理の方法を国民全体で考えていくべきではないでしょうか。

関連記事一覧