法科大学院に聞く!Vol.2愛知大学<第二部>

法曹養成制度改革関連法案の新法曹コースは「お湯をかけて3分の世界ではない」

「先月可決、成立した法科大学院、司法試験の改革をするための関連法案『法曹コース についてどう考えていますか?」

文部科学省がこれから具体的な青写真を出してくると思います。愛知大学でも取り組みは始めていますが、どういう方向性にするかは目下検討中です。法曹コース自体は、理解できるところもあり、間違っているとは思いません。予備試験に対抗し、年数を減らす方向という点で、なるほどと思うところはありますが、…そんなに法曹を短期間で早くつくっていいのだろうか?お湯をかけて3分とかそういう世界じゃないですよね。

「新法曹コース施行によって、志願者数が減少に歯止めはかかると思いますか?」

「法曹コース」の施行によって、法科大学院への志願者数の減少に歯止めがかかるとは言い切れませんね。法学部在学生のうち3年次には何人かが法科大学院入試を受けるでしょうし、それよりも、従前通り卒業してからしっかり腰を据えて考えるっていう人もいると思うので、現時点でその動向は読めないですね。

法科大学院生のキャリア形成はいつから始めるのか?

「法科大学院卒業後のキャリア形成についてお伺いします。愛知大学の院生は、キャリア形成について司法試験に合格をしてから動き出すのか、それともそれまでに先のイメージを持って行動しているのでしょうか?」

5月に司法試験があり、6月の短答試験結果発表があって、今年の短答試験合格率70%の結果でした。短答式に合格した人たちの内、就活で法律事務所巡りをするという院生はあまりいないですね。

それより、来年どうするかという方が多いと思います。多くは次の試験に向けて考えていると思います。中々1発で司法試験に合格する院生は多くないので。一部を除いて、これはどこの法科大学院でも一緒ではないでしょうか。全体での司法試験合格率をみても、良くて50%くらいなので、そんな状況下で就職活動できるのは超優秀な方くらいで例外的ではないですかね。そうではない人であれば、自分が本当に受かっているかわからない…そこで就職活動して、結果として受かってなければ意味がないと思いますよね。それよりも、来年もう一回試験を受けることを考えて勉強する方が本院生には多いですね。就活は、司法修習中に行う。あとは5月に司法試験が終わってから9月の合格発表までは、結構法律事務所でアルバイトする人が多いですね。愛知大学法科大学院の先生の事務所やその知り合いに紹介された事務所などで働きます。実務の勉強にもなるし、またリクルートにもなる、顔つなぎという意味を兼ねていますね。

また、愛知大学は中京圏に位置するので、就職するのは愛知、岐阜、三重くらいで、東京へ行って就職活動しようっていう院生は少ないです。こちらにいて、地元で愛知県弁護士会等に所属する、就職率については本院100%なので。企業内弁護士(インハウス・ローヤー)についても、単発的なセミナー等も開いて院生たちに動機づけるような取り組みもしています。

「一方で、残念ながら司法試験不合格だった人、愛知大学では累積合格率64%ですので3~4割は受からない…そういった人たちのサポートをどうするのか?」

愛知大学法科大学院では、毎年恒例となっている縦コン(先輩とのタテの繋がりの会)と呼ばれる1~3年院生と教員、司法修習生、本院修了の弁護士、といった縦のつながりの交流を目的とした親睦会を開催しています。先日は、近所の居酒屋を一部借り切って約40名が集まっていろいろと意見交換およびディスカッションをしました。そこで上がった話題の一つに司法試験に受からなった人も縦コンといった場に行きたい、そこで情報交換や親好を深めたいが中々行きづらい状況があるといったものでした。

では、受からなかった修了生たちに向けたサポートをどうするかという話で、司法試験に受からなかったといっても法科大学院に入ってくる院生は元々優秀なので、裁判所職員、豊田市役所、名古屋市役所などの公務員の職に就いている人も非常に多いです。夢破れて、そういった方向に進むこともあるが、それをネガティブに捉えるべきではないのです。法科大学院にいけば司法試験に100%受かるわけではないが、それ以外の進路もあり、その道へのノウハウも含めて院生に対してのキャリア・アドバイスなども始めています。

修了生OB・OGがとても親身に後輩の面倒をみてくれて、面談やメールを通して相談し道筋を立ててあげる、そういったことを大学としてしっかりやっていくべきだと思っています。法科大学院にいらっしゃいといって、実際蓋を開けてみたら全員が弁護士といった法曹になれるわけではない。では、受からなかった人たちは3年間無駄な時間を過ごしたのですか?というとそんなことはないです。そこで学んだことは他の道でも活かせますから。そんなに悲観することはないと思っていますが、確かに院生からするとジレンマはあるでしょうね。

院生によって、司法試験を受ける人達、司法試験に合格できそうもない人達とをクラス分けしていくことはできません。やはり、同じ教育をしていく必要があると思います。結果として受からなかった人にどういったケアができるか、愛知大学では、キャリア支援センターもあるので、そこと協力して司法試験をあきらめた人に対して大学としてキャッチアップし、フォローしていく体制を組織立てていくことを考えています。

キャリア支援の問題点

「大学側として合格できなかった人たちへのキャリア支援の打ち出しは難しいのでは?」

確かに最初から逃げ道のようなものを作っていると思われるのもありますね。法科大学院に入学する人は人生をかけて入ってくる。お金も時間も労力を使ってハードに勉強するわけじゃないですか。修了させて、勝手に試験を受けさせて、ダメなら、「はい さようなら」受かればチヤホヤされるでしょうけど…司法試験がダメならば、別の道もあるんだよと私たちは対外的にも言っていくべきだと思うし、別にそれが恥ずべき事ではないと思っています。これまで法科大学院はそういったことはやってこなかったですからね。

「就職が中々決まらない場合、OB・OG含めたコネクションを使って就職はできますが、それはありがたいと思う反面、紹介してもらったところへ就職後、転職や退所がしづらいなどのしがらみがあるのではないかと思うのですが?」

そういった意味では、御社のようなビジネスとしてキャリア支援サービス「キャリア弁護士」を展開している企業を活用することで、その辺りを気にする必要はなくなるのではないかと思いますね。余計な人間関係を考えなくても済みそうですから。

「院生たちの職種カテゴリーの方向性は、大学によって色が違い、自分で目指していくものですか?」

愛知大学法科大学院の理念は、「地域に根差す、いわゆる町医者的な弁護士」の養成です。町医者的な弁護士は、何でもやりますよということで、離婚、交通事故といった一般民事事件そして刑事事件もやりますよという意味の身近な弁護士養成を第一義的に考えています。大企業の法務や渉外などができるのは、東京の限られた大手法律事務所という傾向があります。それを目指すのも一つの選択肢ではあり可能性は否定しません。

院生はどのタイミングでそれを選ぶかということですが、まずは司法試験に受からないとどうしようもない。受かってから司法修習中に色々と当たりをつけていくのが多いと思います。本院から、東京の4大法律事務所にまず入ることはないと思いますので、名古屋をはじめとする中京地区の中堅弁護士事務所に入るのがオーソドックな流れになっていると思います。

まずは、町医者的な町弁(マチベン)を目指すのが一番基本的な流れですね。その後の転職などの発展は色々あります。司法修習の段階で、選択肢としては裁判官・検察官もあるわけですから、その選択肢を捨てているわけではなく、これは司法修習中にほぼ決まることでしょう。

もし弁護士という選択をした場合は、どの方向にいくのかというのは、まずは法律事務所就職。その事務所が、労働問題が得意なら労働問題、知財(知的財産法)なら知財を扱うわけですし、そこら辺は就職してからオールマイティでやるしかないのが現状でしょう。そういう意味では、まだまだ弁護士の世界は業務自体がそんなに特化していないと思います。それこそアメリカの大手ローファームみたいに、スペシャリスト集団というような弁護士事務所は地方にあまりなく、何でもやりますという法律事務所が多いと思います。この点は都市部の大手法律事務所でもそうだと思いますが、事務所内にいろんな対応セクションを抱えて、それぞれにどのような事件でも対応していくということですね。

でもこの地区、中京地区の法律事務所だと大きくても弁護士数50名くらいで、どのような案件でもやらないと食っていけないですよというのが実際問題だと思います。企業法務等の業種だけに特化した事務所というのは、中々成り立たないのではないかと思います。

本院の院生は基本的には地元志向が多いので、まずは町弁を目指していく。ちょっと変わったところで、企業内弁護士(インハウス・ローヤー)という流れですね。企業内弁護士(インハウス・ローヤー)は、基本的に法廷に立つことはありません。企業内弁護士(インハウス・ローヤー)は町弁とは別の業務形態になりますから、道は違うと思います。また、企業内弁護士(インハウス・ローヤー)は、よほどのことがない限り刑事事件は扱いません。扱う業務として、法廷での民事訴訟は別の法律事務所に依頼する流れになるので、あとはコンプライアンスとかの会社内の法務という話になると思います。

愛知大学法科大学院が見据える未来

「今後、愛知大学法科大学院としてここを強化していきたいところはどこですか?」

国際化、人材育成。愛知大学は、伝統的に中国と結びつきが強く、コネクションもいくつかあるので、国際的な人材育成ができればと思っています。(実際に中国人留学生も積極的に受け入れています)

これからは、アジアをターゲットとして法曹養成ができればと考えています。関西地区の大学では、アメリカのロー・スクールといくつか提携して教育プログラムを実施し、周辺の他大学院とも連携してやっておられ、欧米に指向が向いているのかなと思いますね。愛知大学法科大学院もそういった提携校はありますが、これからはアジア近隣に向けてやっていきたいと考えています。近隣の大学ではアジアの国々の立法活動支援をやっておられ、非常に大きな貢献をされていると聞いております。それは開発援助的なものなので、法曹養成とはまたちょっとカラーが違うかなと思います。本院は、これらとも差別化できれば良いかなと思っております。これからは日本だけでなく、世界に目を向けていないとダメでしょうね。

「来年以降、裁判のIT化などで海外と日本、都市部と地方の垣根がなくなってくるような大きな制度改革になっていくことに関してどう考えていますか?」

全国規模での弁護士の連携ということでは、過去の薬害訴訟など、人権派と呼ばれる弁護士が全国各地から集まって来て一団の弁護団を組織し、各地で裁判を起こし被害者救済に当たったということがありました。今後はITを活用して、例えば、知財に詳しい弁護士さん(これは地方の方でも良いわけで)といった優秀な人材を集めて弁護団チームを作って、そこに業務を委託し弁護士間で業務分担をするような形ができれば面白いですよね。そういった能力を持った弁護士に登録してもらうようなデータベースを作成しそこに登録してもらわないといけないですけどね。(笑)

「裁判特化型クラウドファウンディングといったサービスもでてきています。ITなどを活用して変わりつつある部分と一方で海外からみると遅れていることころもあるのかと思いますが?」

今後、弁護士に求められるスキルは、単に法的な知識を知っているだけでなく、コミュニケーション能力、事務所を経営する能力、公衆の前面に立つカリスマ性なども必要なことなのかなと思いますね。どの世界でも、まぁ中々そういう人はいないですが…(笑)

「愛知大学から将来、そういう人がたくさん出てくれば良いですね!」


愛知大学法科大学院 お問い合わせ先
大学院事務課 車道事務室
名古屋市東区筒井2丁目10-31
TEL:052-937-8115 E-mail:ls-info@ml.aichi-u.ac.jp
URL:http://www.aichi-u.ac.jp/lawschool
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