法科大学院に聞く!Vol.2愛知大学<第一部>

2019年6月19日に法科大学院、司法試験の改革をするための関連法案が参議院本会議で可決、成立しました。法科大学院修了までの期間短縮の「法曹コース」設置と司法試験合格までの期間を最短5年に短縮、院生の経済的負担を軽減し、昨今の法科大学院志願者数の減少に歯止めをかけるのが狙いで、2020年4月施行予定となっています。この法案に伴い、2004年度に創設された法科大学院制度は大きな転換期を迎えるとみられています。

これからの法科大学院はどう生き残っていくのか? 愛知大学法科大学院伊藤博文学院長にお伺いしました。

法科大学院の定員割れ、閉校の現状

「法科大学院の定員割れや閉校の現状についてどう考えられていますか?」

法曹養成における法科大学院という位置づけで、2004年度から法科大学院制度が始まりました。各法科大学院とも運営に非常に苦労しており、制度的に失敗ではないかとの声も聞きます。制度開始当初74校ありましたが、今ではその半分ほどになり、合格率の伸び悩みや弁護士市場が活性化しないなど、ネガティブな要素が指摘されています。しかし、我々法科大学院運営側としては、法曹養成における法科大学院の役割には十分意義があると考えています。マイナスの面を並べればたくさんあるのかもしれませんが、逆にプラスの面はあまり言われていないですよね。

例えば具体的に挙げると、それまでは予備校主体の一発試験の司法試験による法曹養成だったのが、法科大学院ができたことで現役の裁判官、検察官、弁護士などの実務家、また私たちのような研究者教員が協力して次世代の法曹を育てる・教育ができる環境ができたことは大変意味があると考えています。

実際、愛知大学法科大学院を卒業して弁護士になった方たちは地元の愛知・岐阜・三重県を中心に活躍し、モチベーションも能力も高く、高い評価を受けているという声を聞いています。そういう意味では、それなりの結果が出ているのではないかと思っています。

弁護士は長時間労働で、給料も労働対価ほど高くないのか!? 

「昨今、各メディアで「弁護士という職業は長時間労働で、給料も労働対価として高くない」といったネガティブキャンペーンのような情報が多く見受けられ、法科大学院生の親御さんも「高い学費を払い、苦労して弁護士になってもと将来を憂い、それなら大手企業法務などの安定した職についた方が良いのでは・・・」といったことを聞かれることについては、どう思われますか?」

本院では、毎年4月に就職支援サポートをしている会社に法科大学院新入生向けのセミナーをしてもらっていますが、その中で「弁護士が食っていけないのは本当か?」という話題が出ていましたが、具体的なデータを出せばそれは間違っているということが分かると思います。今、都市部を離れた司法過疎地域では、弁護士が足りていません。また給与面でも、いわゆる4大法律事務所と呼ばれる事務所では初任給1000万円くらいとも言われています。

先日、愛知県弁護士会会長に来学していただき講演をしてもらった際、「法曹はそんなに悲観するものではない。人から感謝される素晴らしい職業」とおっしゃっていました。数字的なものを見てもネガティブキャンペーン的な情報が過ぎていたのではないかと、これからはもっとポジティブなことを我々も発信していかないといけないと思っています。

企業内弁護士(インハウス・ローヤー)も非常に人気があり、本院でもそちらに進む人も多くなってきています。毎年9月にJILA(日本組織内弁護士協会)という団体からセミナーを行ってもらい、院生たちが参加して、企業内弁護士(インハウス・ローヤー)について、実際どのような仕事をしているのかを実体験できるようにして、そこで先輩弁護士達と接点を持つような流れを作ってきています。そこでキーになっているのは、愛知大学法科大学院卒の弁護士達です。例えば、十六銀行や豊田市役所などに務めている人たちにも来ていただき、セミナーで講師として参加してもらい、レクチャーや懇親会を行い、キャリア支援を行っています。女性の弁護士は特に、育児・介護などを担う場が多々あり、長時間労働が厳しいという状況では、育休や介護休暇の充実した企業の従業員として働くことも一つの選択肢としてありますね。また弁護士資格の有り無しかで法務部に入ることは、待遇面で差が付くこともあると思います。企業内弁護士(インハウス・ローヤー)を必要としている企業や地方公共団体が増えてきているので、そういう意味でも弁護士のニーズはかなり潜在的にあると捉えています。その方向に進む弁護士も、期待できるマーケットではないかと思います。

一方で、弁護士事務所でもいわゆる徒弟制度的なノキ弁やイソ弁は、ほとんどタダ働き状態や安い給料のイメージがあると思いますが、弁護士としてエンジンがかかり、独立すれば相当稼げるということも事実としてあるということも伝えていかないといかなければなりません。まぁ、あまりお金お金というのもどうかと思いますが…(笑)

年々減少する司法試験受験者数への本音

「司法試験受験者数が今年5000人を切り、法曹界を目指す人たちが少なくなってきていますが?」

マーケット自体がシュリンクしていくことは、非常に残念です。ただ本当に法曹になりたい人が来てくれるという意味では良いと思っていますが、お金目当て、儲かる職業だからという理由だけで、弁護士という職業を選ぶ人は望ましいとは思えません。そういう人はいい法曹には成れないと思います。

コアな部分で、若い人たちの中にも「社会正義を実現したい」「弱者を助けたい」「法的に困っている人を助けてあげたい」といった心のキレイな人たちがいて、そういう人たちが大きなコアになってくれれば、今はこの数でも、むしろそれでもいいかなと思います。時世の流れに流されて法科大学院に来るよりはまだ良いのかも知れませんが、量がないと質も維持できないので、ある程度の法曹志望人数も必要になってくるのかなと。その辺り兼ね合いが難しいですね。本院も募集定員を割っていますし、どこの法科大学院も苦しいのではないかな…そういう意味ではもう少し来てほしいと思います。

合格者1500人いれば1501人目の受験生をサポートしたい

「院生の獲得拡大か少人数制か?貴院の方針を教えてください。」

本院では少人数制を当初から教育方針として掲げており、結果として合格率が高いです。受験生にとっては、ネームバリューのあるブランド大学法科大学院に目が向いてしまいますが、トップの法科大学院でも50%くらいの司法試験合格率。そのトップクラスの法科大学院へ行ったからといって必ず司法試験に受かるわけでもないんですね。どこの大学を選ぶのかは相性的なところもあります。

愛知大学法科大学院は、司法試験が1500人合格するなら1501番あたりにいる人たちをグっと上にあげる教育を目指しています。トップ層の司法試験受験者は自分たちで合格を掴む力を持っているかもしれませんが、そうではない普通の法科大学院生を合格させられるのが法科大学院の教育力であると思います。そこでどれだけ法科大学院側が組織としてアシストできるか、背中を押してあげられるか…。そこでは、少人数教育は大きな武器であり、もっと精度をあげることができるよう日々努力しています。

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