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特別養子縁組の対象年齢引き上げの見通し

特別養子縁組の対象年齢引き上げの見通し

今般、国会において「特別養子縁組」の対象年齢が6歳未満から原則15歳未満へと引き上げる内容の民法改正案が可決されました。

いったいなぜ子どもの年齢を大幅に引き上げる必要があるのか、それによる弊害などはないのでしょうか?

今回は、特別養子縁組の対象年齢引き上げの是非について、考えてみましょう。

改正内容とその主軸

現在の民法において、「特別養子縁組」を利用できるのは子どもが6歳未満の場合に限られます。

このように低い年齢制限がもうけられているのは、子どもが大きくなると、家族が変わることによる影響が大きくなり、養親と親子関係を形成するのが難しくなる可能性があるためです。

特別養子縁組では、戸籍も書き換えて続柄も「父」「母」「長男」「長女」などとし、完全に血のつながった親子と同様の状態にします。それであれば、子どもが「本当の親」であると思い込める年齢の方が良いと考えられたので、子ども側の対象年齢を6歳未満としているのです。

ところが今回の法改正案では、特別養子縁組の子どもの対象年齢を15歳にまで引き上げようとしています。

また今の制度では、子どもの実親は家庭裁判所の審判が出るまでいつでも養子縁組の承諾を撤回できるとしていますが、改正案ではそれを改め、撤回できる期間も制限する考えです。

対象年齢引き上げの重要性

今回、なぜ子どもの対象年齢を大きく引き上げようとしているのでしょうか?

それは、年齢制限によって特別養子縁組を利用できず、実親からの虐待から逃れられなかったり放置され続けたりする子どもが多数存在するからです。

特別養子縁組を利用できれば子どもを温かく迎えてくれる家庭があるのに、年齢が障壁となって今の親の元にとどまらざるを得なくなったり、親のいない状態で放置されたりしてしまいます。

そのような現状に鑑みて、6歳以上であっても保護を必要とするのであれば、特別養子縁組を利用できるようにしようとしています

制度拡充による懸念と悪用の可能性は

ただ、特別養子縁組の制度拡充は、良いことばかりではありません。以下のような問題点や懸念材料があります。

1.子どもが今の家族と引き離される

1つは、子どもが「今の家族と引き離された」と感じる問題です。子どもが10歳以上にもなってくると物事の判断能力もついてきます。そんなときにいきなり今の家族と引き離されて、別の家族のところに連れて行かれて「今日からこの人たちが親」と言われたら、納得できず心を閉じてしまうおそれもあるでしょう。13歳以上などの思春期にそのような扱いを受けたときの子どもの心に対する影響も心配です。

また特別養子縁組を行うと、虐待者(親など)以外の仲の良い兄弟や祖父母などとも引き離されてしまう問題があります。

2.悪用の可能性

2つ目に、特別養子縁組の制度が悪用される可能性があります。今の制度(対象年齢が6歳未満)であっても人身売買や性犯罪などの被害に遭う懸念はありますが、対象年齢が引き上げられるとそういった被害が拡大する可能性がありあす。

特別養子縁組の支援業者などと言って、人身売買まがいのいかがわしい商売をする人や、子どもを引き取って性風俗店で働かせたり自ら性的虐待をしたりする人がいないとも限りません。

本当に今回の改正案通りに改正が行われるとしたら、こうした問題点への対処措置も検討しておく必要があります。

まとめ

特別養子縁組の理想はすばらしいものですし、制度を利用して幸せになれる子どもが増えることは望ましいことです。しかし制度を悪用されないよう対策をとる必要がありますし、ある程度成長した子どもの心を傷つけないようにするための対処方法も検討しなければなりません。

簡単に「対象年齢だけ上げれば済む」という問題ではありません。子どもは社会の宝ですから、これから日本の社会全体で考えていかねばならないテーマと言えるでしょう。

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