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旧優生保護法を巡る国家賠償請求訴訟 初の司法判断

先日、旧優生保護法の下で不妊手術を強制されたとして女性らが国に損害賠償を求めていた訴訟において、初めての判決が下されました。

裁判所は「性や生殖を選択する自由」を憲法上の権利として認めながらも「除斥期間」が成立しているとして、損害賠償請求自身は認めませんでした。

今回は、旧優生保護法とはどういった法律だったのか、今回の判決にはどのような意味があるのか、被害者を救済する方法などについて考察します。

旧優生保護法とは

旧優生保護法は、不良な子どもの出生を抑制することなどを目的として1948年に施行された古い法律です。不妊手術や中絶手術などについて規定していますが、その中で、「一定の人に対する強制的な不妊手術」を定めていました。

すなわち「不良な子孫が生まれないようにするため」に、「好ましくない」と判断された人たちを強制的に不妊状態にしたのです。具体的には身体障害、知的障害がある人や素行に問題のある人が、不妊手術を受けさせられました。

中には、子ども時代に何のことかわからないままに手術を受けさせられて、気づいたら不妊の身体になっていたという方もおられます。

旧優生保護法はこのような差別的な内容の問題の多い法律であったため1996年に大幅に改定され、現在は、母体を保護する目的を持った「母体保護法」として形を変えて残っています。

旧優生保護法を巡る訴訟の概要

法律が改正されても、旧優生保護法のもとで不妊手術をされた人たちの身体は元には戻りません。現在、全国各地において、不妊手術を受けた方々が国を相手に国家賠償請求訴訟を起こしています。

このたび、その訴訟の初判断があり、注目されています。

裁判所の判断の概要は以下の通りです。

  • 人には性と生殖についての自由である「リプロダクティブ・ライツ」が認められ、これは憲法上の権利でもある。旧優生保護法の規定は違憲・無効である
  • 旧優生保護法による不妊手術は原告らへの重大な権利侵害と言える
  • しかし不妊手術からすでに20年が経過しており、原告らの請求権は除斥期間によって消滅している
  • 被害者を救済するための立法措置については国会に義務があったとまでは認めにくく、立法不作為にもとづく損害賠償請求も認められない

このように、裁判所は原告らに対する権利侵害を認めながら、除斥期間によって請求を棄却し、立法不作為についても責任を認めなかったのです。

違憲としつつ損害賠償を認めなかった理由と「立法不作為」が問われなかった理由

裁判所が、旧優生保護法による規定を違憲としつつも損害賠償を認めなかったのは、不妊手術から20年が経過して「除斥期間」が経過していたからです。除斥期間が経過すると、不法行為にもとづく損害賠償請求権は消滅するので、一切の請求をできなくなります。

また国が救済措置のための立法を早期にしなかったことについては、これまで日本ではリプロダクティブ・ライツについての議論も積み重なっておらず国の立法義務が明確ではなかったこと、不作為が立法裁量の範囲内であったと言えることなどの理由で、国の責任が認められませんでした。

「旧優生保護法の救済法(一時金支給法)」

現在では一応、旧優生保護法によって不妊手術を受けさせられた人への救済法(一時金支給法)ができています。これにより、被害者へ対し一律に一人320万円が一時金として支払われます。

ただし一時金支給法は「旧優生保護法の違憲性」や「国の責任」を認めるものではなく、単純に「一時金による補償」を行うだけのものです。また、わずか320万円という金額で、被害者たちの精神的苦痛が本当に慰謝されるのか、疑問が残るところです。

まとめ

自分でも知らない間に「不良な子孫を残さないため」などという差別的な理由で不妊手術を受けさせられた方々の思いは、推し測るにあまりあるものです。たった320万円の一時金で解決できるものではないでしょう。今後の裁判の行方、国の対応と展開を見守っていきたいところです。

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