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池袋の暴走事故・加害者はなぜ逮捕されないのか?

池袋の暴走事故・加害者はなぜ逮捕されないのか?

先日、池袋で87歳の男性が自動車を暴走させて交通事故を起こし、12名の死傷者を出しました。

通常、このような重大事故を起こしたら加害者は「現行犯逮捕」されるものですが、この事故の加害者は逮捕されずに入院治療を受けており、ネットなどでは「上級国民だからではないか」との憶測が流れています。

今回は、池袋の交通事故の加害者がなぜ逮捕されないのか、検討してみましょう。

事故概要

今回の事故は、信号機のある交差点で加害者の運転する車両が赤信号で高速でつっこみ、歩行者12名を死傷させたものです。男性はアクセルとブレーキを踏み違えていたのか、まったくブレーキを踏もうとせずアクセルを強く踏み込んで暴走していました。

大きな被害を出しましたが、事故で加害者本人も受傷したため、現場から救急搬送されてそのまま入院しています。

加害者の男性は87歳であり、元通産相の官僚で大手企業の役員もつとめており、勲章も受章している人物でした。通常、このような重大な交通事故を起こすと現行犯逮捕されて危険運転致死傷罪が適用されるものですが、今回男性は逮捕されず在宅捜査となっています。

上級国民は逮捕されない?

この事故の後、加害者の男性が「逮捕されない」ことについてネットなどでさまざまな憶測がささやかれました。すなわち「これほどの重大事故で加害者が逮捕されないのはおかしい。官僚を経験しており勲章を受章している上級国民だからではないか?」「マスコミも、『〇〇容疑者』などと言わずに『さん』つけにしたり匿名にしたりしている。普通と異なる扱いになっている」「ここ日本でも、国民にランク付けされて公然と差別が行われているのではないか?」と言われたのです。

実際、この事故の直後に神戸市でバスの運転手が事故を起こして2人が死亡しました。その事故の加害者であるバス運転手は「現行犯逮捕」されたことから、池袋の事故の加害者の扱いと比べられて、警察や検察に対してより不信感が高まりました。

逮捕されない理由として考えられること

では、池袋の交通事故の加害者は本当に「上級国民」として優遇されているのでしょうか?

そうとも限らず「逮捕できなかった事情(逮捕しなかった事情)」がいくつか考えられるので、ご説明します。

1つは池袋の交通事故の男性が救急搬送されたことです。現場で重傷を負った本人の傷の手当ての必要性が高ければ治療を優先するのはやむを得ないことです。日本では被疑者被告人にも人権が認められており「交通事故を起こしたらその場で死んでも致し方ない」ということにはなりません。

まして加害者は87歳の高齢者です。けがをしたまま逮捕して留置場に入れたらそのまま死亡した可能性も高くなっていました。そうなったら国は男性の家族から国家賠償請求される可能性があります。

また男性は「逮捕の要件」を満たさなかったとも考えられます。

「逮捕」や「勾留」などの身柄拘束の目的は「逃亡」と「証拠隠滅」の防止です。87歳で地位も家族もあって大けがをしている男性が、交通事故の罪を逃れるために逃亡したり証人威迫などの証拠隠滅をはかったりすることは、通常考えにくいと言えます。

この点は、60代と若く受傷もしていなかった神戸市のバスの運転手と大きく異なるところです。

こういった事情から男性には逮捕の必要性も相当性もなく、警察は逮捕に至らずその後も在宅捜査の判断となったのでしょう。

まとめ

加害者が逮捕されるかされないかは重要かもしれませんが、それよりもっと大切なのは「適切な司法判断が下されること」です。すなわち、この加害者に危険運転致死傷罪が適用されて長期の懲役刑となるのか過失運転致死傷罪となって軽い刑罰となるのかなどの問題です。

逮捕されたかどうかだけに惑わされず、「結論」が出るまでしっかり見守っていきましょう。

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