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「性同一障害特例法」は戸籍上の性別変更のため「不妊手術」を求める要件の違憲性について

「性同一障害特例法」は戸籍上の性別変更のため「不妊手術」を求める要件の違憲性について

最近「LGBT」の方たちに対し世の中の注目が集まっており「性同一性障害特例法」という法律も制定されています。性同一性障害(トランスジェンダー)とは、生まれ持った性と心の性が合致しない状態です。性同一性障害特例法は、トランスジェンダーの方が戸籍上の性別を心と同じ性に変更するため「不妊手術」を必要な条件としています。

先日、あるトランスジェンダーの方がこの不妊手術を要する規定の廃除を求め、最高裁まで争って最終的な判断が下されました。

今回は、性同一性障害特例法の合憲性についての最高裁の判断内容を紹介するとともに、今後望まれる対応について考えてみましょう。

性同一性障害特例法が定める戸籍上の性別変更条件とは

今回、裁判で争われたのは「性同一性障害特例法」の内容です。

この法律では、一定の要件を満たした場合、トランスジェンダーの方が心の性別に合わせて戸籍上の性別を変更することを認めています。

その要件の1つに「生殖器についての外科手術(不妊手術)」を必要としています。つまり不妊手術をしないと戸籍上の性別を変えてもらえないのです。

しかし本来、身体に重大な侵襲を伴う手術を受けるかどうかは個人の自由ですし、子どもを作ることは人間の基本的な権利です。危険も伴う外科手術を受けて生殖機能をなくさないと性別の変更ができないのは憲法違反ではないか、という理由で、トランスジェンダーの方が家事審判に対して異議を申し立てたのが今回の事件です。

実際手術には高額な費用や危険を伴い、こういったことを要件としているために戸籍上の性の変更を躊躇するトランスジェンダーの方も多いと言われています。

原審と二審は原告の主張を認めず、争いは最高裁までもつれ込みました。

最高裁の判断

最高裁は、トランスジェンダーの戸籍上の性別変更に外科手術を要するという要件について、どう判断したのでしょうか?

1.「現時点では合憲だが将来にわたって検討が必要」

実は極めて微妙な判断が行われました。

結論としては、全員一致で「規定は合憲」としましたが、そこには「現時点では」という条件がつけられました。

さらに「今後も不断の検討を要する」とされ「違憲の疑いが生じていることは否定できない」という補足意見もつけられました。

2.最高裁の判断の理由は?

なぜ最高裁の決定はこのような微妙な判断となったのでしょうか?

現時点では、性同一障害の方が戸籍上の性の変更後に生まれ持った性の方で子どもを作ると、その子どもとの親子関係の取扱いなどが大きく混乱してしまいます。これについての対応ができていない以上、不妊手術なしには戸籍上の性の変更を認めないという規定には合理性があると考えられます。

しかし一方で、身体にも精神にも重大な侵襲を伴う手術を強要すると憲法13条によって保障される「意思に反して身体を侵されない自由」を制限してしまうことは確かです。

そこで裁判所は、上記のような歯切れの悪い判断を示したのでしょう。

立法府や行政府の責任について

最高裁がこのような判断をせざるを得なくなったことには、1つには立法府である国会や行政府である内閣にも責任があると言えるかも知れません。

性同一性障害特例法を作る際に、トランスジェンダーの方が変更前の性で子どもを作った場合にどのように取り扱うか、戸籍法も一緒に改正していればこのような状況にはならなかったとも考えられるからです。

ただ、現時点では具体的にどのような取扱いにするのが良いのかまでははっきりとした結論が出ていないでしょう。今後当事者の方の意見も取り入れながら検討を重ねて行かねばならない問題です。

今回の最高裁の判断内容からすると、性同一性障害特例法の内容は遅かれ早かれ改正されそうな気配もあります。トランスジェンダーの方の戸籍問題については、今後も注目していきたいところです。

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