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ヒト受精卵の遺伝子改変、臨床応用防止へ法規制 政府検討

ヒト受精卵の遺伝子改変、臨床応用防止へ法規制 政府検討

近年、「遺伝子」技術に注目が集まっています。

遺伝子に異常を来した細胞に正常な遺伝子の細胞の核を注入して病気を治療したり、問題のある遺伝子を正常なものに組み換えて病気や障害の治療改善に役立てたりできるなどと考えられているのです。いわゆる「遺伝子治療」です。各国で農作物の遺伝子操作なども研究されています。

しかし遺伝子治療には「ヒトがヒトを作り出す」側面があり、倫理的な問題が指摘されています。そこで今回、政府はヒト受精卵に「ゲノム編集」の技術を適用することを規制する法律を作ると発表しました。

今回は「ゲノム編集」がはらんでいる倫理的な問題点や、倫理問題に対する法規制のあり方について、考えてみましょう。

不妊治療の延長でデザイナーズベビーに繋がる危険性

そもそも「ゲノム編集」とはどういったものでしょうか?

ゲノム編集とは、生物の「DNA」を書き換えることです。

ゲノムとは遺伝子のDNA基列のことです。そのDNA基列そのものを書き換え編集してしまうので「ゲノム編集」と言います。

従来の遺伝子治療は、自分の正常な遺伝子を異常な部位に移植して正常な状態に戻すのが主であり、遺伝子の内容自体を自在に書き換えることはしていませんでした。

ゲノム編集の技術を用いると、ヒトが自由自在にヒトの遺伝子を書き換えられるので、理論的には「どのようなヒトも作り出す」ことができてしまいます。

たとえば「運動ができて頭も良くて美男美女」という子どもも作れますし「異常に力の強い子ども」「異常に走るのが速い子ども」なども作れます。

このように、作られた子どものことを「デザイナーズベビー」と言います。

デザイナーズベビーの倫理的な問題

このようなデザイナーズベビーには倫理的に大きな問題があります。

「好きにデザインできる」ということは「優秀でないと意味が無い」「欠点は悪」という考え方につながっていきますし、人間の多様性も失われる可能性があります。

戦争が起こったとき「残虐なヒト」「力の強いヒト」などが量産されて「兵士」が作られるおそれもあります。

またゲノム編集による人体への影響も、現時点では明らかになっていません。一代目にはゲノムが崩れずヒトとして維持できても、数代続く間にゲノムが崩れて悪影響が出てくる危険性もあります。

日本の遺伝子改変を禁止する法律の無い現状で考えられる法規制の中身

このような状況が続くと、不妊治療においてゲノム編集技術が使われて、どんどんデザイナーズベビーが誕生してしまうおそれがあります。

実際、中国では研究班が受精卵にゲノム編集を施し、双子を誕生させたという報告がされています。ただしこの受精卵は、「胎児に成長する能力の無い受精卵」だと説明されています。

このような中国のニュースも受けて、日本政府はヒトの受精卵に対するゲノム編集を防止する法律を作ることを発表しました。

法案では、ゲノム編集の研究自体は規制せず、ゲノム編集を施した受精卵を「ヒト」や「生物」の受精卵に戻すことを禁止するとされています。

ゲノム編集の研究自体は今後病気などの治療に役立つ可能性があるため禁止せず、倫理的に問題のある「受精卵への還元」を禁止するかたちです。

当面はこの法規制により、デザイナーズベビーが現実に誕生することはないでしょう。

ただし今後法律に違反するものが現れないとも限りませんし、ゲノム編集の技術がどんどん発展していけば、何らかの形で合法化される可能性もあり、先は読みにくい状況です。

まとめ

不妊に悩む方にとっては、ゲノム編集でも子どもがほしいと思うかもしれません。しかしデザイナーズベビーがあふれる社会は、おそらく人間が幸せに生きられる社会ではないでしょう。

倫理と法は大変難しい関係にありますが、法は倫理をも守っていく砦ともなるべきです。国や司法には今後も適切な対応を望みたいものです。

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