法科大学院に聞く! Vol.1 立命館大学<第二部>

二回にわたり「法科大学院に聞く!」シリーズの第一弾として、立命館大学 法科大学院事務局担当 事務長補佐 若山周平様 *所属は当時 に当事者としての率直でリアルなお話として、法科大学院の現状や課題をご紹介させていただきます。

法科大学院でのキャリア支援の難しさ

-第一部-「法科大学院をめぐる現状の情勢」「法科大学院の価値と修習生のキャリア」を踏まえキャリア支援の存在こそ法科大学院で法曹を目指すメリットですが、これがなかなか一筋縄では広がらない法科大学院内の事情があります。ここでは5点挙げてみます。

1.法曹以外への進路支援の難しさ

組織として法曹以外を含む進路支援策の充実は、司法試験に合格させるだけの教育をする自信のなさ、あるいは合格率が悪いことを暗に認めている、と短略的に捕らえられる可能性があります。

また司法試験は学習範囲も膨大で勉強期間も長く、受験生に相当な重圧がかかり、合格する十分な実力があっても、一時の迷いで進路変更をしてしまうケースもあり、大学としては貴重な合格予定者が1名減ることになってしまいます。

安易な進路変更を減らすためにも、法曹以外の進路支援企画を大々的に打ち出せないジレンマがそこにあります。

2.まずは合格。キャリアへの低い意識

学生は法曹になることを目指して法科大学院に入学し、最難関の司法試験合格を目指し日夜学習に励んでいます。そのため「まずは司法試験に合格。その先はまた合格してから。。。」といった発想で長期的なキャリアについて、思考停止になっている方が多く見られます。

一昔前までの、司法試験に合格さえすれば就職に困らず、高収入が約束されている。そんな合格者500人時代の意識が残っているのかもしれませんが、現在はそれほど甘くはなく、先を見据えたキャリア意識を持ち、着実な準備が求められる時代になっています。

キャリアへの意識が低いからこそ、仮に不合格の場合、進路に迷いかねず、結果として法科大学進学はリスクが高いとの認識に繋がっているものとも理解できます。

3.フォローが容易ではないキャリアセンター

法科大学院にとってキャリア支援は非常に重要ですが、大学のキャリアセンターにとって、法科大学院生に合わせたキャリア支援は容易ではありません。

法科大学院生および修了生の場合、在学中から司法試験受験後、すなわち既卒者となった後も含めてトータルでの進路支援が欠かせず、合格した場合は弁護士事務所への就職、裁判官・検察官への任官という一般的なものとは相当異なる就職活動となります。これらのプロセスを理解し、合格の可能性、すなわち成績までをも加味した伴走型のアドバイスをすることは、現状のキャリアセンター組織では荷が重く、対応が容易ではありません。

4.法科大学院修了者の特性

法科大学院修了者の場合、最初から法曹以外の進路を選択するケースは少なく、何回か司法試験を受験してから、他の進路を本格的に検討し始めるケースが多く見受けられます。すでに既卒(既修了)の状態であり、学部からストレートで法科大学院へ進学していた場合でも26~27歳くらいになっています。

近年、新卒一括採用の傾向が薄れつつありますが、それでも既卒27歳で就業未経験者が就職活動を行う場合、民間企業では新卒枠として採用レールに乗れるケースは多くなく、中途採用未経験者もしくは法務部門要員としてスポット的に採用(一般に求人が出回らない採用)されるケースが少なくないと感じます。

法科大学院修了生の多くは学部生の時に就職活動の経験を経ておらず、まさに手探りで就職活動をせざるを得ないことも状況を厳しくしているかもしれません。

5.弁護士は就職難?法曹以外はどこへ就職?

結局のところ、一時期言われた弁護士の就職難についても、実際は合格者数が1,500名程度に落ち着いてきたことから、司法修習を終えて就職先が見つからないというのは感覚としては皆無に近くなっています。全国一律ではありませんが、求人難の声が聞かれ「弁護士の就職難」はすでに去ったと言えるのではないでしょうか。これは統計的に法曹就職マーケットの数量調査をしているジュリスティックス社のデータからも明確に確認できます。

未合格者についても、就職は決まっている模様ですが、実際には100%の把握はできていません。修了後、長い場合はすでに5年が経過し、なおかつ不本意ながら法曹以外への進路に進んだ場合、当人から自主的に大学に進路報告がなされることはほぼありません。未合格者の進路把握は重要な課題であり、本学でも継続的に進路調査アンケートを実施していますが、依然、把握率の向上は課題として残っています。

法科大学院事務局の力量が試される

厳しい状況におかれている法科大学院は、法曹養成機関として、単に司法試験合格だけを担うのではなく、法曹以外への進路へ進む場合にもおいても積極的にキャリアサポートを行い、教育機関として責任を持って修了生を社会へ送り出していく必要があると考えます。

教育内容の質を高め、学生の実力を練成し、司法試験に立ち向かうだけの実力を身につけさせることができるのは、実際に教育を行う教員です。しかし、法科大学院で行われている教育全体を俯瞰し、司法試験や法曹界への就職に精通しつつ、長期スパンで学生をフォローしながらキャリア支援まで行えるのは、法科大学院事務局を担当する職員に他ならないでしょう。

職員はすでに単なる事務をこなすだけの事務屋の域を超え、学生自身のキャリア形成に深く関与しうる重要なポジションにあります。そして、いまだにステレオタイプな批判が残っている社会に対しても、法科大学院で学ぶメリットや就職状況など正確な情報発信をする必要があります。「法科大学院とは司法試験に合格しなければ価値が無いのか?」答えは「否」です。100%の合格が保障されていない以上、他の進路へ進むケースは必ず生じる。法曹以外への就職は決して“負け組”ではありません。

「法科大学院で学ぶ価値」について、さらに正しい認識を持ってもらう努力を続けるべきだと思います。

厳しい状況であるからこそ、今まさに法科大学院事務局担当者の力量が問われていると言っても過言ではないでしょう。

ただし、職員は教員と異なり定期的な、時に非常に速いペースで人事異動が行われ、それが力量形成やノウハウの蓄積が進まなかった背景と一つであると言えるでしょう。また比較的長く担当した場合でも、自身がその分野を専門的に学んだ経験があるのはレアと言えます。

そこで必要となるのが、法科大学院を外部からサポートする企業ではないでしょうか。法科大学院特有のキャリア支援、就職活動、また法曹分野での求人情報などに精通し、法科大学院事務局と二人三脚で学生や修了生のキャリアをサポートできるような存在です。

法科大学院が長期スパンでの伴走型キャリア支援を展開することで、多くの方に過度に進路について不安を覚えることなく、安心して法科大学院へ進学し、将来の法曹を目指してもらいたいと願っています。

<第一部>の記事はこちらから

関連記事一覧