法科大学院に聞く! Vol.1 立命館大学<第一部>

二回にわたり「法科大学院に聞く!」シリーズの第一弾として、立命館大学 法科大学院事務局担当 事務長補佐 若山周平様 *所属は当時 に当事者としての率直でリアルなお話として、法科大学院の現状や課題をご紹介させていただきます。

法科大学院をめぐる現在の情勢

立命館大学  法科大学院事務局担当 事務長補佐 若山周平 様 *所属は当時
立命館大学  法科大学院事務局担当 事務長補佐 若山周平 様 *所属は当時

2004年の法曹養成制度改革により法科大学院が誕生し15年が経過したいま、法科大学院が抱える現状をここでは大きく分けて3つを挙げてみます。

1.多すぎた法科大学院の数

当時の規制緩和・自由競争の流れの中、申請した74校すべての開校が許可され、想定された自然淘汰による閉校が法科大学院制度の失敗と映り、進路を検討する学生にとってネガティブな印象を与えてしまったことは否めません。

2.訴訟の数が予想ほど増えなかった

法曹養成制度改革では、日本においても欧米型の訴訟社会が到来すると見込み、法曹人口の増大が必要とされ、これを受けて司法試験合格者数を毎年3,000人とする目標が立てられました。しかし実際は一時的な増加はあったものの、当初の予想ほど訴訟は増えず、結果各地の弁護士会が法曹人口の増大に反対決議を出したのも記憶に新しいです。

3.司法試験予備試験の登場

当初、時間的・経済的に法科大学院へ進学する余裕のない者を対象とする試験であるとされたが、学部生や法科大学院生までもが受験する事実上のバイパスルートとして現在に至っています。

司法試験予備試験の登場

このように法科大学院は最初から苦戦が予想される中で誕生し、法科大学院同士の競争、法曹人口の増大に対する批判、司法試験予備試験の登場という激流にもまれ、2020年4月の入学者を募集するのは35校(2019.5時点)なっています。多額の補助金が投入され、各大学において教員組織、施設、さまざまな制度の整備にもかかわらず、わずか15年で半数以上が閉校もしくは募集停止になった結果は、壮大な社会的損失であるといわざるを得ないと思います。

その昔、時には10年以上も司法試験を受験し続ける者がおり社会的な損失であると意識され、受験回数制限が設定(法科大学院修了後、現在は5回まで)されましたが、皮肉にも新制度たる法科大学院でも、再び違う形で社会的損失が生じたことになります。

法科大学院の価値と修習生のキャリア

法科大学院の価値判断は、「司法試験の結果(合格者数および合格率)」だけだと感じます。確かに判断基準として司法試験にどれだけ合格できるかは重要な指標のひとつではあります。

しかし、法科大学院は司法試験の受験予備校ではありません。単なる受験技術だけでなくふさわしい教育・体制が準備され、「法科大学院で学ぶこと」そして「法科大学院を修了したこと」そのものの価値について、まだまだ社会的認知は進んでおらず、法科大学院さらにはそれを支える事務局の責務であると感じます。キーワードは、「法科大学院生のキャリア」ではないでしょうか。

しかしながら、法科大学院で学ぶメリットはいまだ失われていないと言えます。例えば授業の多くは双方向型で行われ、ディスカッションや質疑応答、日ごろの教職員、学生同士も接点が多く、コミュニケーション力が身につくとは良く言われています。

意外と盲点なのが、在籍期間中に継続的にキャリア支援を実施できる点かと思います。

一言で法曹と言っても弁護士事務所は規模、取り扱い業務、キャリア形成などが千差万別であり、まさに民間企業に就職する際の企業分析に匹敵する下調べが必須です。検察官、裁判官ついても、単に司法試験や二回試験の成績だけで任官が決まるわけではなく、それなりの調査そして自己分析と自己PRなどが内定獲得には欠かせません。

また仮に司法試験に不合格であった場合や、学ぶ中で法曹への適性を感じずに進路変更する場合など、法科大学院出身者として、就職することが想定される。多様な進路を想定したキャリア支援は、司法試験を目指す者にとっても併願策として捕らえることができ、自身のキャリアに対するリスク低減すにも繋がります。

法科大学院に進学し法曹を目指すデメリットのひとつとして、仮に何年も勉強を続けた後、司法試験に不合格であった場合の進路リスクをあげる方が少なくありません。確かに司法試験対策のみで他に何もしなかった場合はリスクでしかないでしょう。しかし、長期スパンで自身のキャリア計画について考え、合格した場合/できなかった場合、それぞれの進路の選択肢を事前に調べ、自身の適性や年齢、また受験を続けるだけの金銭的準備の状況などを勘案しながら、第二希望の進路との併願についても時間をかけて準備をした場合、進路リスクは相当程度、軽減することは可能です。

以上、第一部は「法科大学院をめぐる現状の情勢」「法科大学院の価値と修習生のキャリア」について貴重なお話をお届け致しました。

次回は法科大学院の課題と事務局としての思いについて「法科大学院でのキャリア支援の難しさ」「法科大学院事務局の力量が試される」という観点でのお話をお届け致します。

<第二部>の記事はこちらから

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