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法改正で「体罰禁止」が明確に!何がどのように変わるのか?

法改正で「体罰禁止」が明確に!何がどのように変わるのか?

「児童虐待は違法」と声高に叫ばれているにもかかわらず、痛ましい児童虐待事件は後を絶ちません。中には「しつけである」という理由で子どもに暴力を振るい、死なせてしまう親や親の交際相手もいます。

このような現状に鑑みて「体罰禁止」の法制化が進められており、2019年3月19日には児童福祉法と児童虐待防止法の改正案が衆議院に提出されました。

以下で体罰禁止を定める児童福祉法と児童虐待防止法の改正案の内容や課題について、解説します。

体罰禁止を定める法改正案の内容

今回、児童虐待を防止するために改正されようとしているのは「児童福祉法」と「児童虐待防止法」です。これらの法律は、虐待や性的な問題などのさまざまなトラブルから子どもを保護し、健全に成長できるようにはかるものです。

今回の改正案は、親や児童福祉施設における「体罰」を禁止して、子どもへの虐待を防ごうとするものです。「しつけ」を口実とした虐待ができなくなるので、痛ましい児童虐待事件を減らせるという目算です。改正法の施行は来年春を目指しています。

改正案の問題点や課題

ただ、今回の児童福祉法と児童虐待防止法の改正内容には、不備や課題も指摘されています。

体罰の範囲が明確でない

体罰の範囲が明確でない

まず、禁止される「体罰」の範囲が現時点では明確になっていません。

いくら体罰禁止になるとは言え、親が子どもを一切たたいてはいけないというのも非現実的です。たとえば、子どもが誰かを傷つけたりお店のものを壊したりとったりして、まったく反省していない場合などに、わからせる目的で、頭をたたくしつけは必要でしょう。

小さい子どもが外で大泣きしてどうしようもないときに腕などをつかんで引っ張ることもあります。そのようなことまですべて「体罰」というのか、どこまでが許されてどこからが違法になるのかの線引きが非常に困難です。今回の法改正案ではそこが明確になっていません。

罰則がない

体罰の範囲が明確になっていないことと関係しますが、今回の法改正では違法な体罰に「罰則」がもうけられていません。

禁止される行為が不明確な状態で罰則を設けると、予想外に処罰が適用される可能性があり、法の適用を受ける国民に不利益が大きくなるためです。

しかし罰則がないと実効性を伴わず、子どもへの虐待を防ぎにくいのではないかという問題が残ります。

規制を受ける人が限定されている

今回の法改正により「体罰禁止」の規定が適用される対象者は極めて限定されています。具体的には「親権者」か「児童相談所の長など」です。

つまり、親権者ではない「親の交際相手」「内縁の夫(妻)」などには体罰禁止の効果が及びません。

親権者以外の人には「通常の傷害罪などが適用されるので問題ない」という考えのようですが、それでは抑止力に欠けるのではないか?という疑問も呈されています。

民法の懲戒権との関係について

民法には親の子どもに対する「懲戒権」が定められています。これは、親が子どもにしつけを行うことを正面から認めるものです。体罰禁止によって懲戒が行えなくなるわけではないので、懲戒権と体罰禁止規定との関係について明確にする必要があります。

今回の改正では議論が煮詰まっていないため、改正後2年をめどに検討される予定です。

まとめ

今回の改正により、体罰禁止が明文化されることには一定の意義があると考えられます。

ただし、禁止される体罰の内容が不明確で罰則がないなど、まだまだ検討課題は多数残されていますし、全国の児童相談所の施設数も不足したままの状態です。

今後さらに実のある議論が重ねられて実効的な対策がとられることを望みます。

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