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「破産者マップ」の違法性について

「破産者マップ」の違法性について

2018年12月から2019年3月上旬にかけて、「破産者マップ」と呼ばれるウェブサイト上に破産者情報が掲載されて問題となっていました。

破産者の再生が阻害されること、闇金による利用なども考えられることなど様々な悪影響が予想され、被害対策弁護団も結成される状況となりました。また掲載された破産者からの大量の削除申請もあって大騒ぎになり、結局サイトは閉鎖に追い込まれました。

破産者マップの作者は「官報」のデータを利用してマップを作成したようですが、官報情報で公表されている情報をまとめて別サイトを作成することに法的な問題はないのでしょうか?

以下では破産者マップの違法性について検討してみたいと思います。

官報のデータを利用する事に法的な問題はないのか

官報のデータを利用する事に法的な問題はないのか

今回、破産者マップを作成するもととなった情報は「官報」の破産者情報です。

官報とは政府が発行している機関誌で、日々の破産者情報が掲載されています。

また官報は一般に向けて販売されているので誰でも読むことができますし、ネット上から閲覧することも可能です。

つまり、破産者マップに掲載されていた情報は、どこかに秘匿されていた情報ではなく「官報によって公開されていた情報」です。そうであれば、すでに公開されていた情報をまとめただけの破産者マップには違法性がないとも思えます。

しかし公開されている情報だからといって、自由に転載して良いものではありません。

「情報を集約して転載する」作為が加わるために違法性が認められるケースもあります。

たとえば会社の登記簿を見ると、代表取締役の住所と氏名が記載されています。会社の登記簿は誰でも取得できるので、登記事項証明書を申請すれば代表者の個人情報を取得できますし、ネット上の「登記情報提供サービス」を利用しても確認できます。

しかしこうした情報を、あえてネットで公開したときに「プライバシー権侵害」と判断した裁判例があります。

また、紙の電話帳に自分の電話番号を掲載することを承諾しても、ネット上のサイトでの公開までは承諾したことになりません。そこで電話会社が紙の電話帳への登録者の情報(電話番号や郵便番号など)をネット上に掲載したことが違法と判断された例もあります。

まして「破産した」と言う情報は、単なる氏名住所などのプライバシー情報にとどまらず名誉に関わる内容でもあり「名誉毀損」の問題も発生します。

破産者マップの運営者は大量の個人情報を預かり管理する立場となったので、個人情報保護法の適用が問題となる可能性もあります。

このようなことからすると、たとえ公開されている官報の情報であっても、それをまとめて破産者マップにする行為には「プライバシー権侵害」や「名誉権侵害」をはじめとした各種法令への違反が認められるでしょう。

各種法令への違反

知る権利と興味本位の判別

一方、国民には「知る権利」が認められています。破産者情報は、国民の知る権利に資する情報として保護されないのでしょうか?

確かに知る権利は、国民が民主主義を実現するために重要な権利ですが、無制限に認められるものではありません。

知る必要が小さく、かつ公開によって他者の権利侵害をする情報であれば、たとえ知る権利があるとしても情報保護の方が優先されます。

本件で言うと、一般国民にとって破産者の情報を知ることは、さほど重要とは言いがたいでしょう。ほとんどの人にとって、そのような情報を知っても知らなくてもどちらでも良いはずです。

また情報公開によって破産者が被る精神的損害や闇金勧誘などの具体的なリスクを考えると、情報秘匿を優先すべき事案と言えます。

国民に知る権利があるとしても、単なる興味本位で必要のない破産者情報をのぞきに行く権利までは認められないということです。

まとめ

破産者マップはすぐに閉じられたので、大きな問題になるまでに一応の解決を図れましたが、今後誰がどのような類似行為をするかわかりません。ネット社会の中、違法な情報公開には、くれぐれも注意しましょう。

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