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戸籍上の姓と民法上の姓を分ける「新論法」裁判所は夫婦別姓を否定

戸籍上の姓と民法上の姓を分ける「新論法」裁判所は夫婦別姓を否定

婦別姓を求める声は依然として高く、これまでさまざまな裁判が起こされてきました。

2019年3月25日にも、東京地方裁判所が夫婦別姓を求める1つの裁判で請求棄却の判決を出しました。

その裁判で、原告は「戸籍上の姓と民法上の姓を分けて夫婦別姓を認めるべき」という主張が行われていました。

以下では「戸籍上の姓と民法上の姓を分ける」とはどのようなことなのか、また裁判所がどういった理由で請求棄却したのか、解説していきます。

原告らの主張内容について

今回ご紹介する夫婦別姓の裁判で、原告らは以下のような主張をしていました。

日本人同士の婚姻の際に別姓が認められないのは不合理

現在、日本人と外国人が結婚するときには「夫婦別姓」が認められており、外国人が日本人と結婚しても、外国の苗字を捨てる必要はありません。

また日本人が離婚する際にも、離婚後の姓を選択できます。離婚後、旧姓に戻ることも可能ですが「婚氏続称」という手続きをとれば、婚姻時に使用していた姓を使い続けることもできるのです。

  • 日本人と外国人が結婚するとき
  • 日本人と外国人が離婚するとき
  • 日本人同士が離婚するとき

上記のいずれの場合にも「姓を選択出来る」のに、日本人同士が結婚するときだけ「姓を選択できない」のは不合理ではないかという主張です。

戸籍上の姓と民法上の姓を分けるべき

今回原告らは裁判で「戸籍上の姓と民法上の姓を分けるべき」という主張もしていました。

「戸籍上の姓」「民法上の姓」とはどのようなものなのでしょうか?

現在の民法では、「日本人同士が婚姻したときには夫か妻の姓を選ぶ必要がある」「婚姻時に配偶者の姓を選択した場合、離婚すると旧姓に戻る」と定められています。これが「民法上の姓」の規定内容です。

ただし戸籍法により「日本人でも、離婚後に婚姻時の姓を名乗り続ける『婚氏続称』」が認められています。これは戸籍法によって認められた「戸籍上の姓」です。

このように、現在の規定においてもすでに「民法上の姓」と「戸籍上の姓」が異なっているのだから、婚姻時の姓についても婚氏続称と同じように、戸籍法に民法の例外的措置として定めを置いて夫婦別姓を実現すべきと主張していました。

裁判所の判断

こういった原告らの主張に対し、東京地裁はどのように判断したのでしょうか?

裁判所は、民法を改正せずに戸籍法のみを改正して夫婦別姓を認めるのは、法体系を無視するものであって認められないと判断しました。

法体系というのは、法律全体が形作る秩序です。

個々の法律は独立して制定されますが、全体としての統一性が必要です。そうでないと、国民が混乱してしまうからです。たとえばある法律では「Aが正しい」と書かれているのにもう1つの法律では「Aは間違いでBが正しい」と書かれていると、国民はどちらが正しいのかわからなくなってしまうでしょう。

それぞれ異なる事項について定める法律であっても、向いている方向は同じである必要があります。

「民法では明確に婚姻中の夫婦別姓を禁じているのに戸籍法でこれに正面切って反対する規定をおくのは、法体系の統一性を乱すもので認められない」というのが裁判所の判断です。婚姻時の夫婦別姓を認めることと婚氏続称を認めることとはレベルが異なると考えているのでしょう。

まとめ

今回の判断は地裁レベルなので、今後高裁や最高裁において判断の変更が行われる可能性もあります。また別の理論によって夫婦別姓を求める人が現れる可能性もあります。これだけ夫婦別姓を希望する人が多いのですから、いつかは夫婦別姓が認められるのではないでしょうか。今後も注目していきたい課題です。

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