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「法曹コース」について元弁護士が思うこと

「法曹コース」について元弁護士が思うこと

現在、政府において法曹養成の制度として「法曹コース」が作られようとしているのをご存知でしょうか?法曹コースができると今までよりも早く弁護士などの法曹資格を得られる可能性がありますが、実際にこの制度は有用と言えるのでしょうか?

以下では法曹コースについて、元弁護士の立場から意見を述べたいと思います。

法曹コースとは

法曹コースは、司法試験を早期に受験できるようにする制度です。現在は法学部での4年とその後の法科大学院2年、最低6年は大学に在籍しないと司法試験を受けられない制度となっています(予備試験をのぞく)。

しかしこれでは時間がかかりすぎるということで、大学時に一定の成績を収めていれば3年時に飛び級を認め、すぐに法科大学院への入学を認めて合計5年の在籍期間に短縮しようとしています。

法曹コースができても全員が選択できるわけではなく、大学側によって人員が選別されます。現在の「飛び級」に似た制度ですが、大学卒業を必ず認定されるなどの違いがあります。

法曹コースが設けられる理由

今回、大学在籍期間を1年短縮する法曹コースを作るのは、法科大学院の人気低迷を打開するためです。

法科大学院は2004年にできた制度ですが、司法試験の合格率が低いことや法曹資格そのものに魅力がなくなったことなどもあり、志願者が急激に減少しています。当初は延べ72800人もの志願者がいましたが、2018年度は8058人に落ち込んでいます。入学定員充足率は7割弱となっており、募集停止や法科大学院自体の閉鎖も相次いでいます。

このような状況に鑑みて、法科大学院や法曹資格の人気を復活させるために法曹コースが考案されました。

実施時期

法曹コースの実施時期は、2020年の予定です。

法曹コースで懸念されていること

法曹コースの設置によって現在の司法制度は改善されるのでしょうか?

現実には、疑問の声も多く聞かれます。

そもそも現在法科大学院の人気が低迷しているのは、以下のようなことが理由です。

  • 司法試験の合格率が3割程度と高くない
  • 法科大学院に行くのに莫大な費用がかかる
  • たとえ合格しても良い暮らしや良い仕事が保証されない

大学在籍年数を1年短くした法曹コースを作ったとしても、上記のような問題が根本的に改善されない限り、解決にはつながらないと思われます。

また「法曹コースによって司法試験を早く受験できるようにするよりも、予備試験制度を見直すべきではないか?」という意見も出ています。

予備試験とは、法科大学院を卒業しなくても司法試験を受けられる制度です。現在早期に法曹になりたい人は、予備試験の勉強に取り組み合格することによって数年早く法曹になることが可能です。予備試験に合格すれば法科大学院に行かなくても良いので、その間の法科大学院における法教育は受けません。

法曹関係者からは「予備試験を法科大学院の1年から受けられるようになると、ロースクールでの教育が有名無実になってしまう」という声が出ています。

法曹コースはありかなしか

私個人としては、法曹コースはあってもなくてもかまわないと考えます。現在の司法制度の抱える問題は、法曹コースの有無ではなく今の法科大学院や予備試験、弁護士会のあり方そのものだと考えるからです。

法科大学院ができるまでは、誰でも司法試験を受験できました。中卒でも高卒でもよかったのでいろいろな人が法曹になっていましたし、お金もかかりませんでした(ただし予備校代は必要)。このことで多彩な人員が法曹となっていましたし、法曹の地位や収入も高く資格としての人気も高かったわけです。

司法制度改革で法科大学院ができたためにこういった状況はなくなりましたが、今でも「予備試験」という形で一部残されていて「中途半端な状況」です。

司法制度を根本的に改善したいのであれば、大学在籍期間を1年短縮するなどの付け焼き刃の対応ではなく、もっと根本的な改善が必要と思います。

たとえば弁護士会の強制加入を廃止して弁護士がもっと自由に働けるようにすること、弁護士の活躍の場を広げることや弁護士自身の意識改革も必要です。

法曹コースの設置だけではなく予備試験との関係も含め、今後はもっと抜本的な形で司法制度改革を進めていけたらと希望します。

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