• 用語解説
  • 法曹界に関連する用語を解説します。
「薬事法」ってどういう法律?

「薬事法」ってどういう法律?

 楽天子会社の薬ネット裁判でも話題になった薬事法。普段あまり馴染みのない法律ですが、薬事法とはどのような法律なのでしょうか?

薬事法とは

 薬事法とは、読んで字のごとく「薬」に関する法律ですが、現在の正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保に関する法律」となっています。そのため、人によっては「薬事法」ではなく「薬機法」と呼んだり、また「医機法」と呼んだりもしますが、ここでは便宜上、一般に広く知られている「薬事法」という呼び方を使います。

 薬事法は「薬」に関わる法律であることは間違いありませんが、その対象はいわゆる「薬」に限られません。

 薬事法は、その1条で「この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の品質、有効性及び安全性の確保」やこれらの使用による危害の発生・拡大を防止するために必要な規制等を行うことを目的として明らかにしています。

 対象となるのは以下の4品目です。

薬事法は「薬」に関わる法律であることは間違いありませんが、その対象はいわゆる「薬」に限られません。
  • 医薬品
  • 医薬部外品
  • 化粧品
  • 医療機器及び再生医療等製品

 これらの品質や有効性、安全性の確保などを目的として様々な措置や規制を施しているのが薬事法です。

 これらの品目の製造や表示、販売、流通などについて具体的に定めてます。

薬事法の歴史

 薬事法の歴史は古く、時代に応じて様々な改正が行われてきました。

 薬事法の始まりは、明治7年に制定されたわが国最初の医療・薬事法規である「医制」だとされています。その後、数度にわたって名称と内容を変更し、昭和18年に先に成立していた「売薬法」や「薬剤師法」と統合されて、「薬事法」となりました。

 その後、再び「薬剤師法」と分離されましたが、「薬事法」という法律名は70年以上にわたって用いられてきました。このような薬事法の長い歴史の中で、長年親しまれた「薬事法」の名称をも変更した2013年の法改正は大きな改正となりました。

 薬事法は、現在行われている楽天子会社の憲法裁判以外にも、過去に憲法裁判が行われた歴史があります。

 それが有名な「薬事法距離制限違憲判決事件」です。

 この裁判は、新たに薬局の開設を申請する場合、申請する薬局の場所から一定範囲以内に既に薬局があるときは、都道府県知事が開設を不許可にすることができるとした薬事法の規定が、憲法22条1項が保障する営業の自由を侵害するとして行われた行政裁判です。

 この裁判は最高裁判所まで争われ、最高裁は、このような距離制限規定は目的と手段が釣り合っておらず、他の方法によっても規制の目的を達成することができるから合理的な規制とは言えないとして、憲法22条1項が保障する営業の自由を侵害して違憲であると判断しました。このように、法律の規定そのものが憲法に違反すると判断した最高裁判決は戦後2例目であったことから、この判決は大きな注目を浴びました。

 薬事法は、人の健康に直接影響を与える医薬品等を対象とする法律である以上、一定の制約はどうしても必要となり、そのような規制が薬局等の営業の自由と対立する構図があるため、憲法裁判になりやすい法律とも言えます。

薬事法に違反した場合のリスク

 薬事法の規定が憲法違反と判断された歴史があるとは言え、薬事法は国会で定められた法律である以上、従わなければなりません。

 仮に薬事法に違反してしまった場合、どのようなリスクがあるのでしょうか?

 一番大きなリスクは刑事罰を科されるリスクです。 

 たとえば、無許可で製造販売した場合には、3年以下の懲役か300万円以下の罰金を科される可能性があります。

 また、承認前の医薬品を広告した場合には、2年以下の懲役か200万円以下の罰金を科される可能性があります。

 これらの行為は当然、犯罪となるので、逮捕されれば実名が報道され、社会的信用を大きく失うことにもつながります。

 また、刑事罰以外にも監督官庁である行政機関から行政指導が行われる可能性があります。行政指導自体は違法状態等の改善を求める比較的ソフトなものですが、このような行政指導が行われたにも関わらず改善がみられないと行政処分が下される可能性もあり、場合によっては業者名を公表され、社会的信用を大きく失う可能性もあります。

まとめ

 このように薬事法は、いわゆる「薬」に限られず、医薬部外品や化粧品等も対象とされるため、自分には関係がないと思っていても知らないところで違反している可能性があります。特に広告の規制については、違反していると思われるような広告も多くみられるため、注意が必要です。

 専門家には、行政機関の運用実態も含め、法規制を正しく理解することが求められます。

法規制を正しく理解

関連記事一覧