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「捜査令状」なしに個人情報を提供

Tカード情報の「捜査令状」なし提供、問題点は?

先日「Tカード」で有名なCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が、会員の個人情報を「捜査令状」なしに捜査当局に提出していたことが明らかになり、同社への不信感が強まっています。

捜査令状なしに顧客情報を捜査機関に提供するとどのような法的問題があるのでしょうか?個人情報保護法に違反しないのかなど、以下で検討しましょう。

CCCによる情報提供問題の概要

Tカード会員の膨大な顧客情報

CCCはTカード会員の膨大な顧客情報を管理しているため、捜査機関から事件捜査の目的で、顧客に関する情報提供を求められることも頻繁にあります。

しかしCCCには「個人情報保護法」が適用されるので預かった個人情報を適切に管理すべき義務があり、原則的には本人の同意なしには第三者に情報開示してはなりません。

実際にCCCも従来は裁判所が発行した捜査令状がないない限り、顧客情報を捜査機関に開示していませんでした。

ところが2012年頃からは、令状がなくとも「捜査関係事項照会書」という捜査機関が発行した書類により、以下のような顧客情報を開示する運用を行っていました。

  • 氏名や電話番号などの会員情報
  • ポイント履歴
  • レンタルビデオのタイトル
  • 店舗利用履歴

警察からCCCへの情報照会は日常的に大量に行われており、当局内で「必要なものに絞って照会するように」とする通達まで出されている状態でした。

Tカードにはたくさんの提携先があるため、いったん情報をとられるとそこから他店舗なども含め、さまざまな情報が漏れてしまう危険性が高まります。

そこで今回CCCによる安易な情報提供が「個人情報が漏えいされている」「捜査機関に情報をとられる可能性がある」と言われて騒動になってしまったのです。

CCCによる情報提供は違法か

利用規約、個人情報保護方針との関係

CCCが「捜査関係事項照会書」にもとづいて捜査機関に情報提供するのは違法なのでしょうか?

利用規約、個人情報保護方針との関係

CCCとTカード会員との契約内容は「カード利用規約」によって明らかにされています。利用規約内に「捜査関係事項照会書にもとづいて捜査機関に情報提供をすることを認める」という条項があれば、CCCが警察に情報提供しても基本的に問題になりません。

実際にはこの問題が発覚するまでTカードの会員規約に捜査機関への情報提供について明示されていませんでした。

なお同社はHP上で「個人情報保護方針」を明らかにしており、そこには警察などの捜査機関に協力する必要があり本人の同意を得ることが困難なケースでは、同意なしに個人情報を提供する可能性があると書かれています。

https://www.ccc.co.jp/customer_management/privacy/index.html

個人情報保護方針|CCC カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社

個人情報保護法との関係

CCCは個人情報保護法が適用される事業者ですが、捜査機関への顧客情報提供に法的問題はないのでしょうか?

個人情報保護法は、事業者が第三者に顧客情報を提供するとき、原則的にあらかじめ本人の同意を得る必要があるとしています。ただし「法令に基づく場合」には例外的に同意なく提供しても良いと規定しています(法23条1項各号)。

「捜査関係事項照会」は刑事訴訟法197という「法令に基づく照会」なので、CCCがこれにもとづいて顧客情報を提供しても個人情報保護法違反にはなりません。

損害賠償請求の可能性について

CCCが利用規約に明示せずに顧客情報を捜査機関に対して提供していたとしても、個人情報保護法違反にはなりません。

ただしカード会員には自己情報コントロール権としてのプライバシー権が認められます。カード規約に明示もせずに勝手に捜査機関に情報提供されたとなれば、会員はCCCにプライバシー権侵害を理由に損害賠償請求できる可能性があります。

他機関や会社の対応状況

他機関の捜査関係事項照会への対応状況をご紹介します。

たとえば神奈川県は、県立病院の「診療情報の提供に関する指針(ガイドライン)」において、捜査事項関係照会があれば診療情報を提供する可能性があると明らかにしています。

NTTドコモも捜査関係事項照会書により、一部の情報を捜査機関に提供する場合がある旨明示しています。

LINEも捜査機関にメールアドレスや電話番号、IDなどの情報を提供していることを明らかにしています。

東京メトロやJR東日本は、交通系電子マネーにかかる情報を捜査関係事項照会によって提供しています。

CCCが捜査関係事項照会書にもとづいて警察に情報提供したことは、個人情報保護法違反にはなりにくいとしても法的にクリアではありません。今後の参考にしてみてください。

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