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法科大学院の受験数減少の背景

法科大学院の受験数減少の背景

司法制度改革の一環として、2004年に新たに始まった法科大学院は、開設初年度は受験者数が7万人を超える人気を博していましたが、翌年度には一気に3万人以上受験者数を減らし、2007年度には一時的に受験者数が増加したものの、その後は受験者数減少の一途をたどっています。2018年度には8058人までその数を減らしました。なぜここまで人気がなくなったのでしょうか。

原因1:合格率の低迷

一番大きな原因は、司法試験の合格率が当初の予定ほど高くないことにあります。法科大学院制度が設計された当初は、学生を小手先の受験勉強から解放し、実務的な教育に重点を置くために、司法試験の合格率は7割程度にすることが予定されていました。しかし、実際の合格率は初年度の49%から翌年の40%、翌々年の33%と続き、その後は20%台の合格率が続いています。このため、法科大学院に高い授業料を払って通っても法曹になれる可能性は低く、費用対効果に見合わないとして敬遠されるようになったのです。

原因2:業界イメージの悪化

  次に大きな原因と考えられるのが、弁護士の就職難、経営難などのネガティブな情報が広がったことにあります。司法制度改革の一環として法曹人口を増やすことが決められ、当初は目安として司法試験の合格者を年間3000人程度まで増やすことが目標とされましたが、弁護士増加による過当競争や質の低下を懸念した弁護士から猛烈な反発があり、弁護士の就職難や経営難等の情報が拡散されるようになりました。弁護士増加による就職難、経営難という情報自体は何ら間違っていないのですが、あまりにネガティブな情報が多く流されたため、厳しい業界にリスクを負って行く必要はないと敬遠されるようになったのです。実際には1年目の新人弁護士でさえ平均年収が約568万円もあるという事実(法務省の「法曹の収入・所得、奨学金等調査の集計結果(平成28年7月)」)は、このようなネガティブな情報の陰に隠れ、弁護士では生きて行くのが難しいという情報だけが一人歩きするようになりました。

原因3:予備試験ルート

予備試験でショートカット

3つ目の原因として考えられるのが予備試験ルートの存在です。本来、司法試験は法科大学院を卒業しないと受験資格を得られないという制度設計でしたが、法科大学院に進学するだけの経済的又は時間的余裕がない人のための別のルートも必要であるとの意見から、司法試験の受験資格を得るための試験として2011年に司法試験予備試験が始まりました。この予備試験に合格すれば、法科大学院に通う学費も時間も不要になるため、予備試験ルートで法曹資格を得ようとする人が増えました。

まとめ

法律事務所の経営が以前ほど楽ではなくなったことは事実です。年間3000人合格の目安も撤廃され、一時期に比べると司法試験合格者数も減少しています。そのため、新たに弁護士に登録する人の数も減少していくことが予想されます。

しかし、依然高収入な職種であることはデータからも明らかである上、若くして自らの能力を駆使して自由にできる仕事でもあり、また、弁護士であるという社会的信用を活かして活動領域を広げることができることも事実です。自らの能力を活かして生きていくことによって得られる充実感は代え難いものがあります。ネガティブな情報だけで判断して志望者が減っている現状というのは、逆に言えば、倍率が低い中で弁護士や法曹であることの恩恵を受けられる大きなチャンスです。

いずれ、ポジティブな情報も正しく流れるようになり、法曹人気の低下も底を打つ時が必ず来ます。今こそがチャンスです。

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