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日産

元弁護士がゴーン逮捕について考察する

2018年末頃から、日産の元会長であったカルロス・ゴーン氏の一連の刑事事件が世間の注目を集めています。年末年始をはさんだせいで少し世間の関心が薄れましたが、年明け早々勾留期限が切れる件もあり、今後ますますこのニュースが過熱していくでしょう。

法曹関係者の間でもゴーン元会長に対する処分には注目が集まっており、さまざまな意見や憶測が飛び交っています。

今回は、元弁護士である私から見たゴーン元会長の逮捕や勾留、起訴などの刑事手続きについて、思うところを述べたいと思います。

有価証券取引法違反による逮捕も

ゴーン会長の被疑事実について

そもそも今回、ゴーン元会長がどのような被疑事実で逮捕・起訴されているのかみてみましょう。

  • 金融商品取引法違反
  • 有価証券取引法違反
  • 特別背任罪

ゴーン会長は、実は「3回」逮捕されています。

1度目は金融商品取引法違反、2度目は有価証券取引法違反、3度目は特別背任罪です。

これらのうち、「金融商品取引法違反」と「有価証券取引法違反」は、ゴーン氏の「報酬の記載」に関する違反です。

法律では、代表取締役などの「報酬額」を「有価証券報告書」に記載しなければならないことになっています。ところがゴーン氏は、その報酬額について長年虚偽記載を続けていました。2011年から2015年までは48億円ほど少なく記載しており、2016年から2018年までは42億円ほど少なく記載していました。これらの有価証券報告書への不実記載が理由となって、2018年11月19日に1度目の逮捕をされ、同年12月10日に2度目の逮捕をされたのです。

ただ検察側が、勾留期間の満期を目前として勾留延長を申し立てたところ裁判所が却下したことなども影響してか、12月21日、東京地検特捜部は、ゴーン氏を会社法の「特別背任罪」によって再逮捕しました。

特別背任罪は、有価証券虚偽記載とはまったく異なる「ゴーン氏個人の犯罪行為」であり、これが成立するとなると大きな影響が及びます。

特別背任罪は成立するのか

特別背任罪とは、会社の役員などの地位にある人が自分の利益を図る目的などで背信行為を行い、会社に損失を発生させた場合に成立する犯罪です。

ゴーン氏の場合、2008年にリーマンショックの影響によりゴーン氏個人が被った約18億円分の損失を日産に付け替えたことが、特別背任に当たると言われています。

ただ、ゴーン氏は証券取引委員会からの指摘によってすでに契約を戻しており、実質的に日産には損失が発生していないという指摘があります。損失が発生していないのであれば、特別背任は成立しないので、立件や処罰は困難となります。

なお、ゴーン氏が逮捕された当初から「ゴーン氏が日産を私物化していた」「報酬として記載せずに自宅などの供与を受けていた」などと言われていますが、未だこれらについて検察が動けていないところをみると決定的な事実や証拠がないのでしょう。

粉飾決算をした場合にも特別背任罪が成立する可能性がありますが、「日産の売上げ額が数千億円という規模の中で4、50億円程度の役員報酬の虚偽記載程度では粉飾決算とも言いがたい」という指摘もありました。実際このこと(虚偽記載)によって会社に損失が発生していないなら特別背任罪は成立しません。

特別背任罪は不成立か

裁判所の独立性について

ゴーン氏の逮捕に対しては、諸外国のメディアからも批判が集まっており、外的圧力も懸念されるところです。先日裁判所がゴーン氏の勾留延長を却下し検察側からの準抗告も棄却した際には「裁判所が外圧に負けた」と残念がる法曹関係者の声が聞かれました。

裁判所は独立した司法機関として、世論や外圧に左右されることなく、正当な判断を下してほしいものと考えます。

今後検察や裁判所がゴーン氏の刑事事件に対し、どのような動きをとっていくのか注目していきましょう。

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